交通事故の損害賠償請求手続きにおける
保険会社の傾向と対策
保険会社によって違う!? 損害賠償金の交渉現場
保険会社と示談金の交渉をしていると、算出方法に会社ごとの傾向があるな、と感じます。
ここで、私の感じた保険会社ごとの傾向を、「むち打ちの労働能力喪失期間」「むち打ちの場合の入通院慰謝料」「むち打ちの場合の後遺障害慰謝料」を例に、損害保険大手の、東京海上日動火災保険株式会社・三井住友海上火災保険株式会社・損害保険ジャパン株式会社・あいおいニッセイ同和損害保険株式会社について見てみたいと思います。
もっとも、こちらで調査できた母数に限りがあること、保険会社の主張は担当者や事案ごとに異なることから、このページに記載する内容は、正確な傾向とは言えない可能性があること、必ずしも個別の事案に当てはまるわけではないことは留意しておかなければなりません。
むち打ちの対応を比べて見ると
労働能力喪失期間の判断傾向 | |
東京海上日動火災保険株式会社 | やや短め |
---|---|
三井住友海上火災保険株式会社 | やや短め |
損害保険ジャパン株式会社 | やや長め |
あいおいニッセイ同和損害保険株式会社 | やや長め |
むち打ちで、後遺障害等級14級9号が認定された場合の労働能力喪失期間は、弁護士基準で3年~5年とされています。期間に制限があるのは、むち打ちによる痛みやしびれは、改善する可能性があると考えられているためです。その期間について、私の経験では、前述の4社のうち、東京海上日動と三井住友海上はやや短めに判断し、損害保険ジャパンとあいおいニッセイ同和はやや長めに判断する傾向があるように思います。
また、むち打ちで14級9号が認定された場合の入通院慰謝料は、私の経験では、三井住友海上はやや低め、東京海上日動・損害保険ジャパン・あいおいニッセイ同和は問題ないレベルに達していることが多いという傾向があるように思います。
むち打ちで14級9号が認定された場合の後遺障害慰謝料は、東京海上日動で低めになる場合がある一方、三井住友海上・損害保険ジャパン・あいおいニッセイ同和では弁護士基準に沿う内容で示談に至ることが多いという傾向があると思います。
弁護士は、できるだけ被害者の方が得られる示談額が大きくなるよう交渉するのですが、どこまで交渉できるかは、各社の傾向によって違ってきます。示談金は本来、被害者の方に生じた損害を填補(てんぽ)するためのもので、相手方の保険会社によって金額に差があるというのはおかしな話なのですが、実際には、会社ごとに傾向があり、十分な示談金が得られる保険会社とは示談がまとまりやすく、不十分なことがある保険会社とは示談がまとまらず、紛争処理センター等に申立をせざるを得ない場合が一定数あることを、多くの経験から実感しています。
弁護士費用特約の利用にも影響が
弁護士費用特約とは?
交通事故被害に遭ったとき、弁護士費用が自動車保険や損害保険から支払われる特約のこと。
会社毎に対応が違うように感じるのは、弁護士費用特約の支払についても同様です。弁護士費用特約を利用して、交通事故問題のご依頼をいただくと、弁護士費用が特約の上限である300万円までであれば、多くの場合、自己負担なく手続きを進めることができます。しかし、一部の事案では、弁護士費用が300万円以下であっても、保険会社から全額は支払われず、依頼者の方に自己負担をお願いせざるを得ない場合があります。 この問題について、東京海上日動は支払基準が高く、自己負担が最も発生しにくい保険会社です。東京海上日動のグループ会社である、日新火災・イーデザイン損保も同じような傾向です。一方、SBI損保は支払基準が低く、多くの場合、依頼者の方に自己負担をお願いせざるを得ません。その他の保険会社は、東京海上日動とSBI損保の中間的な対応の会社が多くなっています。ただ、その中でもソニー損保は支払いが厳しいことがあり、自己負担の問題が発生することがやや多くなっています。
「自社基準」と言う名の傾向
労働能力喪失期間以外にも、損害賠償金の算出に当たっては、各社ともに「自社基準」や「任意保険基準」といった基準を持ち出してきますが、その金額は、弁護士が保険会社と交渉する際の基準である弁護士基準より大幅に低く、例えば後遺障害慰謝料は、半分以下ということが多いのです。そのため、弁護士に交渉を依頼すれば、保険会社が被害者の方に提示する金額より慰謝料が増額になる可能性が高いと言えます。
このように、保険会社によって対応に様々な傾向が見受けられるので、弁護士としては、各社の傾向を十分踏まえた上で、個々の事案の解決に当たることが重要であると日々実感しています。
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