「高次脳機能障害」の賠償請求に役立つ
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04高次脳機能障害のポイントとなる労働能力喪失率
- このページでわかること
- 交通事故で後遺障害が残った場合、仕事への影響が考えられます。将来にわたっての収入に影響が出る、ということです。ことに高次脳機能障害の場合は、すべての行動に影響する脳の障害であるため、労働能力の喪失は非常に大きなものになります。それだけに、障害の程度に応じて保険会社から適切な示談金・賠償金を受けることが必要となります。
労働能力喪失率とは?
後遺障害による労働能力の低下の程度を表したものを、労働能力喪失率といいます。また、事故に遭わず後遺障害がなければ得られるはずだった収入=逸失利益が、加害者側の保険会社に対する請求の大きな部分を占めるものとなります。逸失利益の算出には、「基礎収入」×「労働能力喪失率」×「就労可能年数に対応するライプニッツ係数」という式を用います。
労働能力喪失率の判断の元となる自賠責保険の基準
労働能力喪失率は、労働能力喪失率表(労働基準監督局長通牒昭和32年7月2日基発第551号)に従って認められる事案が多いと言えます。
障害等級 | 労働能力喪失率 |
---|---|
第1級 | 100% |
第2級 | 100% |
第3級 | 100% |
第5級 | 79% |
第7級 | 56% |
第9級 | 35% |
労働能力喪失率の立証が重要になります
高次脳機能障害の場合にも、加害者側の保険会社は「自賠責保険で認定された後遺障害等級ほどの労働能力喪失は生じていない」という主張をしてくることがあります。また、そもそもの後遺障害等級認定の妥当性について争われることもあります。事案によっては自賠責保険で認定された後遺障害等級とはずれる形で労働能力喪失率が認定されるケースもあります。
- ☆労働能力喪失率は、逸失利益を算定する要素の一つであり(基礎収入×労働能力喪失率×就労可能年数に対応するライプニッツ係数)、適正な賠償を得るためには、きめ細かな主張立証活動が必要不可欠です。
- ☆当事務所では、これまでの経験をもとに、さまざまな支障の拾い出しに漏れがないよう努めています。
主張立証のポイント
主張・立証の際には、特に以下の点について、事前に入念な聞き取り調査等を行います。
- 1.事故前にはできていたが、事故後できなくなった作業の内容。
- 2.復帰した職場でのトラブル。
- 3.作業が可能であるとしても、他人の指導や援助がないとできないこと。
- 4.日常生活における支障
高次脳機能障害による労働能力喪失の内容
高次脳機能障害による労働能力喪失の内容は、自賠責や労災での後遺障害等級認定基準と重なります。
自賠責保険では、どの程度の就労が可能か、就労が不可能な場合、どの程度の介護が必要かという点から後遺障害等級が判断されています(自賠責保険における「補足的考え方」)。
より具体的には、以下の点が考慮されています。
- 1.著しい知能低下や記憶障害は労働能力喪失に結びつく。
- 2.知能指数が正常であっても、行動障害・人格変化に基づく社会行動障害によって、対人関係の形成などに困難があり、通常の社会生活・日常生活への適応が困難な場合は、相応の等級評価がされる。
- 3.社会的行動障害によって就労が困難である一方、TVゲームを操作したり、インターネットでウェブサイトを眺めたりすることができる場合、これだけをもって就労可能と判断すべきではない。
- 4.小児について将来の労働能力を推測する場合、学業成績の変化以外に、非選択的な対人関係の構築ができているかなどを労働能力の評価において勘案する必要がある。
- 5.一般交通機関を利用した移動能力と労働能力喪失の程度とは必ずしも一致しない。
- 6.脳外傷を示す画像所見が軽微な場合でも、労働能力がかなりの程度損なわれている場合がある。
上記の点は、労働能力喪失の程度と関連するものと言えます。
したがって、以上の点を考慮して、保険会社と労働能力喪失率の交渉を進める必要があります。
また、労災上では、高次脳機能障害を以下の4つの能力を分析して判断しています。
- 1.意思疎通能力(会話が成り立つか)
- 2.問題解決能力(課題を手順に従い処理できるか)
- 3.作業に関する持続力(作業に集中して途中で投げ出さないか)
- 4.社会行動能力(些細なことで激怒しないか)
の各要素の支障の程度から判定します。
私見ですが、これを高次脳機能障害特有の症状と関連させると以下のようになります。また、それぞれの機能レベルを判断する基準となる検査(テスト)もご紹介します。
① 意思疎通能力
記銘・記憶力、認知力、言語力などに分けることができます(失語、失行、失認、地誌障害、記憶障害、人格変化などと関るといえます)。以下の検査で、そのレベルを判断することができます。
- 知能テスト:MMSE、HDS-R、WAIS-Rなど
- 記憶テスト:三宅式記名テスト、WMS-Rなど
- 言語テスト:SLTA、WAB失語テストなど
- 失行テスト:標準高次動作性検査
- 失認テスト:標準高次視知覚検査
② 問題解決能力
理解力や判断力などに分けることができます(失行、失認、記憶障害、遂行機能障害、注意障害などに関るといえます)。
- 遂行機能テスト:BADS、WCST、FABなど
③ 持続力
意欲、気分のむらなどに分けることができます(注意障害や人格変化に関るといえます)。
④ 社会行動能力
感情のコントロールや協調性や人格の変化などに分けることができます(人格変化に関ると言えます)。
①~④のいずれも、事故前後を通じて、身近に接してきたご家族のご記憶・証言が、障害の程度を証明する証拠として非常に重要な意味を持ってきます。また、前出の「02)高次脳機能障害の有無や程度の判定について」でも述べたように、医師の診断書も非常に重要となります。そのためにも、しっかりと現状を認識していただく必要があるので、ここでご紹介した様な検査を受けて、ご本人とご家族、医師との認識が一致することが重要です。また、障害を立証するために、追加検査が必要となる場合もあります。
詳しくは弁護士とよくご相談の上、担当医としっかり話し合って納得のいく診断書を書いてもらいましょう。
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