「高次脳機能障害」の賠償請求に役立つ
様々な情報をご紹介しています。
05高次脳機能障害における、家族による
「日常生活状況報告」記入の重要性
- このページでわかること
- 自賠責保険における高次脳機能障害の認定手続きには、医師の診断書だけではなく、一番身近な存在であるご家族の意見も重視しています。
それが「日常生活状況報告」です。この書類で、事故前と変わったことや、何が困難になったのかを、より詳しく説明し伝えることになります。家族でなければわからない障害、日常の生活の中で問題となる障害を明らかにするためのとても重要な資料です。
まずは事例をご覧ください
自転車で交差点を横断中に四輪車と衝突したNさんは、頭蓋骨骨折・くも膜下出血等の大ケガをされ、手術などの治療を受けられました。事故から約1年が経過した頃には、症状も落ち着き、ご家族としても安心していましたが、同じ内容の話を繰り返すことが多くなったり、ご家族から見て幼稚な感じがするといった性格の変化が残存。保険会社から症状固定と言われたNさんとご家族は、今後の手続きに不安を感じ、後遺障害の手続きと示談交渉の手続きを依頼したいとして当事務所にいらっしゃいました。Nさんとご家族からお話を伺ったところ、過失相殺については難しい部分はあるものの、高次脳機能障害が認定される可能性があり、一定額の示談金が支払われる可能性があると思われたため、当事務所で手続きを受任。受任後は、後遺障害申請の手続きと示談交渉を行いました。その結果、高次脳機能障害で9級10号が認定され、賠償金は1616万円を取得できました。
この事例で行った後遺障害の手続きでは、後遺障害診断書・神経系統の障害に関する医学的意見・頭部外傷後の意識障害についての所見・日常生活状況報告等の書類を揃えての申請が必要です。この中の日常生活状況報告は、ご家族が記載するもので、障害の内容や程度について詳細な内容を記載することになります。内容次第で高次脳機能障害として認定できるか、認定された場合の後遺障害等級が変わる可能性があります。
この事案では、Nさんに残っている症状はあまり多くはなく、症状を高次脳機能障害として認定できるかが問題になりました。これについては、弁護士からご家族からできる限り症状の聞取りを行い、日常生活状況報告としてまとめました。その結果、高次脳機能障害として認定を受けることができました。
また、高次脳機能障害として認定を受けることで、1616万円と十分な示談金の支払いを受けることができました。仮に認定が受けられなければ、示談金は数百万円にとどまるおそれがありましたが、日常生活状況報告の内容を充実させることで、適切な示談解決ができたと言えます。
日常生活状況報告とは?
上記の事例からも分かるように、高次脳機能障害では、後遺障害等級認定に当たって、ご家族が記載をする日常生活状況報告が重要な書類になります。それでは、日常生活状況報告とはどのような書類なのでしょうか。
この点ですが、日常生活状況報告とは、高次脳機能障害の症状が残ってしまった方のご家族が、後遺障害申請の際に記入する書類です。主治医の先生にも、後遺障害診断書や頭部外傷後の意識障害についての所見等で、様々な症状を記載してもらいますが、高次脳機能障害の本当の症状は、24時間生活を共にしているご家族でないと分からないと言えます。そこで、ご家族の方から見た症状を日常生活報告として提出することが必要になります。日常生活状況報告には、以下のような点等を記載する必要があります。
- 1. 事故前と事故後で、日常活動・問題行動・就労就学状況・生活状況にどのような変化が生じたか
- 2. 家庭・地域社会・職場・学校などでの適応状況
- 3. 食事・更衣・排尿・排便・入浴・歩行・階段昇降・公共交通機関利用などの身の回り動作能力がどのようになっているか
日常生活状況報告の記載方法
このように、日常生活状況報告には様々な内容を記載する必要があります。書式としては、択一式の質問もあれば、具体的なエピソードの自由記載欄もあります。
例えば、択一式の質問では、一例として日常生活に関する以下の質問があります。
Q 起床・就寝時間を守れますか。
A 受傷前・受傷後についてそれぞれ以下のいずれかで回答
- 1:問題がない
- 2:多少問題はあるがあらかじめ準備をしておいたり、環境を整えておけば一人で安定して行える。
- 3:確実に行うためには、周囲からの確認や声かけが必要。
(確認・声かけが何回かに1回で済むのであれば、上記『2』とする) - 4:周囲の人が、行動を共にしたり、具体的なやり方を示すなど、言葉以外の直接的な手助けが必要。
- 5:準備、声かけ、手助けなどを行っても、指示を守れなかったりするために、周囲の人が後始末をしなければならない。
- 6:年齢や生活環境が異なるために、質問の内容が不適当で回答できない。
(同居していないなどのため)情報不足。
以上の質問の回答の選択肢は、いずれも抽象的な内容で、受傷前・受傷後について、いずれであるかを判断するのは容易ではありません。
また、問題行動に関して、一例として以下の質問があります。
Q 顕著な子どもっぽさ、年齢にそぐわない甘えや依存がありますか。
A 受傷前・受傷後についてそれぞれ以下のいずれかで回答
- 1:ない
- 2:稀にある
- 3:およそ月に1回以上ある
- 4:およそ週に1回以上ある
- 5:ほぼ毎日ある
- 6:当てはまらない
頻度で答えるものですが、時期によって頻度が異なることもあり、受傷前・受傷後について、いずれであるかを判断するのは容易でないと言えます。
その他、身の回り動作能力に関して、一例として以下の質問があります。
Q 食事動作について
A
- 1:自立
- 2:ときどき 介助・見守り・声かけ
- 3:ほとんどできない/大部分介助
- 4:全面的に介助
頻度で答えるもので、いずれであるかを判断するのは容易ではありません。また、主治医の先生が記載する『神経系統の障害に関する医学的意見』にも同じ設問がありますので、主治医の先生の認識と異なる回答になるのは好ましくないと言えます。
以上のような択一式の質問以外に、具体的なエピソードの自由記載欄がいくつも設けられています。実際に書こうとすると、どのような内容を記載すべきか悩まれると思います。また、記載する際の表現も工夫が必要になる場合があります。
日常生活状況報告の質問は、それぞれ重要な意味を持っています。医師の診断と一致している必要もあります。どのように記載すればいいのか、難しい判断が求められる場合もありますので、高次脳機能障害の後遺障害申請に詳しい弁護士としっかり相談する必要があります。また、適切な後遺障害等級の認定を受けるには、日常生活状況報告の内容は、弁護士のチェックを受けた上で、後遺障害の申請を行う必要があります。
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